| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-359  (Poster presentation)

遊水地造成が水生植物の多様性回復に与える効果【A】
Effects of the construction of flood-control reservoir on the restoration of aquatic plant diversity【A】

*荒木聡太(筑波大学), 槐ちがや(土木研究所), 國分直仁(筑波大学), 中村好文(筑波大学), 母良田竜ノ介(筑波大学), 田中法生(国立科学博物館)
*Sota ARAKI(University of Tsukuba), Chigaya ENJU(Public Works Res. Inst.), Naoto KOKUBUN(University of Tsukuba), Yoshifumi NAKAMURA(University of Tsukuba), Ryunosuke HOROTA(University of Tsukuba), Norio TANAKA(NMNS)

遊水地は河川の流量の一部を一時的に逃すために河岸に造成されるが、用地内は常時湛水する場合もあり、湿地環境の保全も付随的に期待できる。遊水地内に出現する植物の潜在的種構成は、造成前の用地で形成された埋土種子相に主に依存すると考えられる。しかし予備調査から、実際の水生植物相の形成には遊水地造成後の経過年数や環境条件が影響すると予想された。そこで本研究では、新規造成された遊水地と年数の経過した複数の遊水地および周辺水域における水生植物の種構成および多様性を、環境データとともに比較することにより、遊水地の造成と環境が水生植物の多様性回復に与える効果を検証することを目的とした。
 本研究は、栃木県南東部を流れる利根川水系五行川の2地域の両岸に造成された遊水地及び同水系の河川、水路、水田において、車軸藻類ならびに維管束植物を対象に、出現種の探索(2022-2023年)および各調査地点のコドラート内(計167ヵ所)の出現種の被度、水深の計測(2023年6-10月)を行った。そして、各地点間におけるα多様性の比較と非計量多次元尺構成法(NMDS)による解析を行い、各地点の種多様性と種構成を確認した。
 2023年の全地点での出現種数は合計128種で、うち水生種は58種、陸生種は70種であった。遊水地では湛水環境(水深10cm以上)と比較して非湛水環境(10cm未満)のα多様性が高い傾向が認められた。各地点での種構成はそれぞれ異なり、遊水地A(2022年造成)の種構成は対岸に位置する遊水地B(2017年造成)よりも河川に類似していることが示された。遊水地Aでは2022年には県内で記録の無いガシャモク等の希少種を含む水生植物39種が確認されたが、2023年には種数が減少した(28種)。遊水地造成は水生植物の多様性復元に寄与する可能性が示唆されたが、水深等の環境要因がその後の水生植物相の多様性変化に対する影響に関しては今後解析を進める。


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