| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-360 (Poster presentation)
野生動物の交通事故による死亡(ロードキル)は,個体群に及ぼす影響が懸念されるため,世界的に問題視されている.琉球列島では,アマミノクロウサギやケナガネズミ,ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコなどといった哺乳類や鳥類に関するロードキルデータは継続的に収集されている.しかし,種数の多い両生類や爬虫類のロードキルに関するデータは少ない.そこで,多様性のホットスポットであるにも関わらず,情報が不足している両生類や爬虫類のロードキルの発生状況を沖縄島北部で調査した.
沖縄県国頭郡国頭村与那を起点,安田を終点とし,生活道路として機能する沖縄県道2号線及び沖縄県道70号線の全長16.25 kmの区間を往復で調査した.発見したロードキル遺体の種名と,発見地点のキロポスト数(沖縄県道2号線の起点:与那からの距離)を記録した.調査期間を2023年1–12月の1年間とし,月に約8日間の頻度で合計96日間実施した.調査時間帯は日没約2時間後から約2時間とした.加えて,調査時の気温・降雨量・湿度を国頭村奥のアメダス観測値(気象庁提供)から抽出した.
目視調査の結果,20種716個体の両生類・爬虫類のロードキルが確認された.このうち,ほとんどが両生類(716個体中648個体;90.5 %)で,ハナサキガエル,オキナワアオガエル,オキナワシリケンイモリの3種が全体の76.8 %を占めた.ロードキル遺体は調査ルート内の全区間で確認され,調査ルートの与那側で発見数が多かった.また,ロードキル発生数は季節によっても変動し,夏季(6・9月)や冬季(2月)に多かった.その他にも,ロードキル発生数は概ね気温や降雨量,湿度が上昇するほど有意に増加した.今後,数年間にわたる調査により,ロードキルの季節変動,あるいは気温や降雨量,湿度などの気象要素との関係について検討していくことが望まれる.