| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-363 (Poster presentation)
日本には計2000か所以上のゴルフ場があり、治水の観点からゴルフ場1つに2、3個の池が作られていることが多い。そのため、日本には4000個以上のゴルフ場池があると考えられる。開発や農薬の使用が問題となった時期もあるが、昨今は規制が厳しくなり、ゴルフ場外からの生物の持ち込みがないことから生物の生育生息場として機能している可能性がある。しかし、日本のゴルフ場池の生物相を調査した先行研究は少なく、ゴルフ場池における生態系は未解明である。本研究では、ゴルフ場池に生育生息する生物を調査し、池の環境特性を把握することで、出現する生物と池の環境との関係を明らかにすることを目的とした。対象生物は、①水生植物・湿生植物 ②シダ植物・コケ植物 ③水生動物(魚類・両生類・水生昆虫類・貝類・甲殻類等)とし、環境特性では面積・周囲長・標高・最大水深・樹木被覆率・コンクリート護岸率・草刈り頻度(頻度が低いものから昇順として4段階設定した)・底質・人口池と天然池の違い・周囲の池個数(ゴルフ場池以外)・水質を調査した。生物調査は対象の生物ごとに担当者を決め、日中に周囲長300mあたり1人1時間を努力量とした。調査は近畿圏内の計11個のゴルフ場池において、水位の増減を勘案し、池内及び水際から3mまでの陸域水域移行帯において採集を行った。環境データは現地調査、ヒアリング調査、GISにより収集した。
平均出現種数±SD(最少-最多出現種数)は水生植物3±2.7(0-10)種、湿生植物5.9±2.4(4-12)種、シダ植物6.1±3.9(1-14)種、コケ植物17.3±5.4(9-25)種、水生動物14.1±5.5(8-26)種だった。池によっては環境省や各府県において絶滅危惧種に指定されている種が確認された。発表では現在調査中の池も含めたうえで、出現種及び種数と池の環境との関係について議論を行いたい。