| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-364 (Poster presentation)
ゴルフ場は生物多様性に貢献する場であることが近年示されつつあり、自然共生サイト認定の候補地の一つとされている。日本は陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する30by30目標達成のため、自然共生サイト認定地の増加と、OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)の登録を推進している。発表者らが近畿圏のゴルフ場の池を対象として生物調査を実施したところ、1か所の池で国内希少野生動植物種に指定されるセトウチサンショウウオの幼生が確認され、同池では水生植物が10種以上生育するなど、豊かな自然が確認された。そして、この結果を用いて自然共生サイトとして池単位で登録できる可能性があることを環境省に確認した。一方、現在ゴルフ場が自然共生サイトとして登録された事例はなく、実際に登録することを想定した場合に、いくつかの課題があると考えられた。本研究では、これまでの調査とヒアリングを通して考えられる課題について整理することを目的とした。調査は生物調査とゴルフ場関係者へのヒアリングから成る。本研究では、池の周囲長300mあたり1時間の努力量で生物確認を実施した。これにより、池ごとに必要な調査時間の推定を行うとともに、池を選定して環境DNAを用いた生物確認も実施し、両者にかかるコストを比較した。ヒアリングでは、自然共生サイト登録によるゴルフ場経営側へのメリットデメリットについて可能な範囲で聞き取りを実施した。今回調査したゴルフ場の面積は215 m²から17944m²で、周囲長は56mから762m、発表者らが調査に要した時間は平均1時間であった。生物調査コストは、調査会社に委託した場合1件あたり3万から10万円程度と推定され、環境DNA解析を委託した場合は魚類、底生動物、有尾目の3生物相で合計7万5000円前後であった。ヒアリングの結果、ゴルフ場の運営上現時点では自然共生サイトに登録することでデメリットが生じる可能性も考えられた。発表では、得られた結果を整理して議論する。