| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-368  (Poster presentation)

倒流木の形態による有機物 滞留の違いが河川の 生物多様性に及ぼす影響【A】【O】
Effects of Coarse woody debris with morphological differences on organic matter retention and the aquatic biodiversity in a stream ecosystem【A】【O】

*本田真奈, 南佳典(玉川大学)
*Mana HONDA, Yoshinori MINAMI(Tamagawa Univ.)

 河川生態系において倒流木は重要であり,自然倒流木には枝が付いているものもある.本研究では河川源流域において,設置する倒流木の形態的特徴によるリター滞留量および滞留リター組成の違いが生物多様性に影響を及ぼすかを明らかにするため,北海道東部を流れる釧路川の一支流に枝付き倒流木を4つ設置し(WBS),枝無し倒流木区(NBS)と比較した.調査は物理的環境(流速,水深,底質)および底生生物調査,リター滞留量測定を行った.
 枝付き倒流木設置後,WBSでは河床形状が複雑になり,瀬において緩流部が増えた.また,流路方向に設けた計測ライン(左岸,中央,右岸)ごとに異なる底質が集約され,多様な箇所において河床に粒状有機物が滞留した.リター捕捉機能ではWBSの方が高く,多様な質のリターを多く捕捉した.底生生物の生物多様度指数はWBSの方がわずかに高かった.
 枝付き倒流木の高いリター捕捉機能により,水の抵抗を受ける箇所が増えたため,淵の個数増加や,瀬における緩流域形成など,NBSと異なる河床環境となることが明らかになった.区間内の淵総容積が増えることはなわばりを持つサケ科魚類の生息密度を増加させることが考えられ,緩流域の増加と多様な質のリター捕捉は,底生生物の分布可能な範囲と多様な質のリターの滞留可能な範囲を拡大させ,底生生物がリターの質を選択できる可能性が高まると考えられる.以上のような枝付き倒流木による河川環境の変化が底生生物の多様度に影響したと推測され,水生昆虫を餌とする魚類などの個体数増加も促すことが予想される.多様な形状の倒流木の存在は河川生態系において重要であり,河川生態系の保全において,自然に発生した倒流木の維持や,自然状態に近い倒流木を設置するなどの配慮をすることが重要であることが理解された.


日本生態学会