| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-369  (Poster presentation)

都市近郊域におけるニホンザリガニの局所絶滅規模および絶滅要因の抽出【A】
The extent of local extinction of Japanese crayfish at the suburban area in Hokkaido Island【A】

*賈イ, 田中一典, 今野友陽, 小泉逸郎(北海道大学)
*Wei JIA, Kazunori TANAKA, Tomoaki KONNO, Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ.)

   土地利用の変化と気候変動とは、生物多様性に対する最大の脅威である。このうち、人間開発で土地利用変化が種の分布と存続に強く影響していることが予想される。都市化の進展により土地利用は、特定種にどれくらいの局所絶滅を引き起こすかの実証研究はまだ限られている。そのため、本研究は絶滅危惧種であるニホンザリガニ( Cambaroides japonicus,、以下、ザリガニ )を対象として、過去10-15年に起きた局所絶滅を定量化し、都市化進展による土地利用との関連性を明らかにすることを目的とした。
   2008年から2013年までの期間でザリガニの生息が確認された31地点において、2023年に再調査を行なった。徒手で捕まえたザリガニの個体数、頭胸甲長、湿重量、性別を記録後、全ての個体を採集地点に放流した。環境条件として水温、流速、水深、川幅、底質、周囲植生、他種の有無を記録した。また、これらの地点を中心とし、GISを用いて50m半径のバッファを作った上に、各バッファ内の農業、森林、都市面積を計算した。一般化線型モデル(GLM)でバッファ内の各土地利用面積がザリガニの存続・絶滅への影響を解析した。
   調査の結果、16地点(52%)でザリガニが発見されず、局所的な絶滅が示唆された。うち5地点では、沢自体が涸れており、ザリガニの生息が不可能な環境であった。前回の調査時点から気温は平均で3ºC上昇しており、気温上昇が直接的、あるいは地下水位の低下を介してザリガニの局所絶滅に影響していたのかもしれない。また、解析の結果として、調査地点を中心として、周り約50m半径の範囲以内で、農業用地と都市用地の相互作用はザリガニの存続に強く影響していることが考えられる。今後、さらに調査地点を増やし、土地利用だけではなくて気候変動との相互作用も考慮して解析する必要がある。


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