| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-370  (Poster presentation)

再導入されたミヤマシジミ7局所個体群における6世代の動態【A】【O】
Dynamics of 7 reintroduced local populations of Plebejus argyrognomon for 6 generations【A】【O】

*秋山礼, 出戸秀典, 宮下直(東京大学)
*Rrei AKIYAMA, Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(Tokyo Univ.)

ミヤマシジミPlebejus agyrognomonは、草原性のシジミチョウで河川敷や農地畦畔に生息する。 幼虫はマメ科のコマツナギのみを食草とする単食性で、複数のアリと共生関係を持つ。成虫は年3〜5回発生し、コマツナギの付近を飛翔し、様々な花の蜜を利用する。近年、生息地の草原環境の消失に伴って激減し、多くの産地で絶滅が相次いだことから、環境省RDBでは絶滅危惧IB類に選定されている。本種の保全には、既存の生息地の保全と並行して絶滅した産地への再導入が必要である。
 本研究では、長野県飯島町周辺のミヤマシジミが絶滅した地域で再導入を行なった。飯島町を含めた周辺地域のミヤマシジミ個体群では、先行研究から既に集団遺伝構造や個体群構造、個体数などが明らかになっている。そのため、再導入ガイドラインの要件に適合し、再導入を行うことが可能である。
再導入は、7箇所の再導入地に専用のケージを設置し、飼育によって得られた蛹1200頭を入れ、羽化させて放蝶する方法を用いた。放蝶を行なった後は、個体数推移と再導入地の環境について調査を行なった。再導入個体群の定着に影響すると予想された複数の環境要因、1. 各サイトの面積とコマツナギの株数、株高2. 蜜源植物の株数、3. 共生関係のアリの個体数、4. 周辺環境、について調査を行なった。
調査の結果、4箇所で昨年度の最終世代である再導入後6世代目の成虫を確認したため、定着と定義した。一方で、2箇所では再導入後1世代目の成虫が確認できず、1箇所では再導入後3世代目の成虫が確認できず定着に失敗したと考えられた。上記の環境要因はいずれも、定着の失敗や成功との関係が見出せず、再導入後6世代という短期的な時間スケールでは、これらの環境要因以外が、定着の成否に影響している可能性がある。


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