| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-379  (Poster presentation)

兵庫県豊岡市におけるシカ個体群管理の評価【A】【O】
Evaluation of deer population management in Toyooka City, Hyogo Prefecture【A】【O】

*島田慎吾(兵庫県立大・地域資源, 豊岡市農林水産課), 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Shimada SHINGO(RRM,Univ.of Hyogo, Toyooka City), Kazuaki NAITO(RRM,Univ.of Hyogo)

ニホンジカによる植生・農林業被害が全国的な課題となっており,2013年に農林水産省・環境省により定められた「抜本的な鳥獣捕獲強化策」により,全国の自治体で対策が進められてきた.これを受けて兵庫県豊岡市では2014年から捕獲強化策「シカ有害被害撲滅大作戦」が実施され,県内
で最大となる毎年6,500頭以上の捕獲を行ってきた.しかし,捕獲数が高止まりしている一方で捕獲圧の地域格差や捕獲効果の不透明さなどが新たな課題として生じており,これまで行ってきた捕獲強化事業の検証を行う必要がある.
本研究では豊岡市の行政区ごとに捕獲圧と個体群密度指標を算出し,これまでの捕獲実績と現在の個体群密度の可視化,並びに有害鳥獣捕獲と個体群密度の関係を解析した.捕獲圧は2015年からの有害鳥獣捕獲の実績を森林面積あたりの捕獲頭数で集計し,個体群密度指標は2023年10月から11月の期間に市内52行政区で糞塊調査を実施することで算出した.
その結果,単年・複数年に関わらず個体群密度指標の増加に伴い捕獲圧も増加したが,個体群密度指標が一定の値を超えると捕獲圧が減少に転じる傾向が明らかとなった.これは,捕獲効率の良い地域では捕獲が進んでいる一方で,地理的・人的・社会的な要因で捕獲が困難な地域で個体群密度が増加していることを示唆する.
個体群密度が高い地域は周辺地域への個体の供給源になっていると考えられ,個体数の調整に負の影響を与える.今後は市全体の捕獲圧を維持した上で,これまで捕獲が進んでおらず個体群密度が高くなっている地域の捕獲も進める必要がある.


日本生態学会