| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-380  (Poster presentation)

茨城県つくば市の茅場における茅資材の現存量および質の制御要因【A】【O】
Quantity and quality of thatching materials, Japanese pampas grass, and its control factors in the urban thatched field, Tsukuba, Ibaraki【A】【O】

*飛詰峻, 廣田充(筑波大学)
*Shun HIZUME, Mitsuru HIROTA(University of Tsukuba)

 茅葺き屋根に利用される茅資材の供給量が、需要量に対して全国的に不足傾向にある。一般的な茅資材は、ススキ等の身近な高茎草本であり、これらの植物学および生態学的な研究は古くから数多く行われているが、茅資材の現存量や質に関した研究は、これまで殆ど行われていなかった。そこで本研究は、茅資材として利用されるススキの現存量および質の評価とそれらの制御要因の解明を目的とした。調査は、茨城県つくば市の「ふるさと文化財の森」茅場で実施した。2022年と2023年に約3 haの茅場に129点の調査枠(1 m × 1 m)をランダムに設置し、調査枠内のススキと表層土壌の調査を行った。また、茅資材としてのススキの現存量と質の評価をするため、茅葺き職人を対象としたヒアリング調査を行った。その結果、ススキの現存量は、715 ± 590 g m-2(平均 ± 標準偏差)と非常に空間的ばらつきが大きいことがわかった。ヒアリングの結果、現存量の少ない場所のススキは茅資材として利用しないこと、茅資材として重視しているのは、ススキの茎の曲がりのなさ、茎の硬さ、および茎の長さであることを明らかにした。ススキの現存量の制御要因は表層土壌の全窒素濃度であること、ススキの稈の物理強度の制御要因は稈の基部断面積と基部部分のC/N比であることがわかった。本研究から、ふるさと文化財の森に指定されている茅場でも茅資材となるススキの現存量のばらつきが大きく、かつ現存量は表層土壌の窒素濃度の影響を受けていたこと、茅葺き職人が茅資材の質に求める条件の一つである稈の物理強度は、稈の断面積と稈のC/N比の影響を受けていることを明らかにした。


日本生態学会