| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-383 (Poster presentation)
日本にはカラス属に分類される鳥が5種類存在するが,我々がよくカラスと呼んでいる種類はハシブトガラスCorvus macrorhynchosとハシボソガラスCorvus coroneである(以下,両種をカラスとする).人が多い都市部ではカラスと人間との間に様々な衝突が起きており,その中でも最も深刻とされている問題がゴミ散乱被害である.食い荒らし対策のために,ゴミ袋や収集容器の変更を行っている自治体もあるが,カラスが好む環境や季節などの知見は必ずしも十分ではない.そこで本研究は,カラスがどのような場所を好み,どこで食い荒らしの被害が発生するのかを明らかにすることを目的に行った.
調査は,高知市朝倉において,森林からの距離や住宅タイプの組み合わせから4つのルートを設定した.調査地は周辺環境の違いを考慮して,計122か所設定した.調査期間は2023年5月から12月にかけて,1回につき1つのルートを6時から12時まで2時間おきに3度巡回した.調査では,ゴミ量やゴミ袋の数(以下,袋数),袋から引き出されたゴミの散乱数,周辺環境(一軒家の別,人通り)などを集計し,他に土地利用図から距離別の森林率も取得した.各調査のゴミ散乱の有無と袋数,収集容器のタイプ,通行人数,周辺環境そして季節との関係について,一般化線形混合モデルと一般化加法モデルを用いて解析した.
調査の結果,各地点8~11日(合計36日)の調査を行い,122地点のうち36地点で食い荒らしの被害が確認された.解析の結果,季節・袋数・通行人数・森林率・収集容器のタイプの効果が検出されたが,通行人数・森林率・収集容器のタイプの効果は他に比べて小さかった.応答変数をゴミの散乱数にし解析したが,どの変数も選択されなかった.以上より対策としては,カラスが袋数を確認できないような工夫を収集容器に施すことが考えられる.また,春に被害が増加した背景には,住民の入れ替わりが考えられる為,新規住民へのルール普及の徹底も重要であろう.