| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-385 (Poster presentation)
二次林は里山の代表地形であり、近年、管理者の減少や高齢化が原因で放棄が起こっている。二次林は放棄されると植物の種数減少など、生物多様性が減少する。二次林の管理には様々な方法があるが、中でも下草刈りは草本群集の構造と機能に対して影響をもたらすとされている。また、草原で行われた過去の研究から、下草刈りが行われると、放棄と比べて比葉面積の減少や草丈の増加が起きることが知られている。草刈りにより、生物多様性を保全するには、具体的な刈り取り強度を明らかにする必要がある。先行研究では、刈り取り頻度を増やすと草丈が減少すること、春の刈り取りは放棄と機能的多様性が類似することが知られている。しかし、刈り高が高い場合には広葉草本に光が当たりやすくなり、光合成・成長の促進が望めるにも関わらず、刈り高の違いによる具体的な植生への影響を見た研究は少ない。
本研究では広葉草本とイネ科草本の両方の成長点が刈り取られない10cmを高刈りとし、下草刈りをすると種数が増加し、刈り高は10cmの方で種数が増加する 植生高、比葉面積が下がり、機能的多様性が上昇する の2つの仮説を立てた。この研究により、二次林の管理を再開する際により効果・効率の良い手入れができるようになることを望む。
よこはま動物園ズーラシアにおいて、刈り高を0cm,10cm,放棄とした操作実験を行った。刈り高の違いに応じて起こる形質各種の比葉面積、植生高などのCWMと機能的多様性を、一般化線形混合モデルを元に多重比較を行った。
結果、刈り高の違いによって種数に大きな違いは見られなかったが、比葉面積は放棄と比べ0cmで小さくなり、機能的多様性は放棄と比べ、10cmが有意に高いことが分かった。刈り取り処理による攪乱は背の高い植物の上部を刈り取ることでニッチに空きを作り、そこに違う種が入ることで多様性につながったと考えられる。以上の結果から刈り高を10cmにした刈り取りを行っていくべきと考える。