| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-391  (Poster presentation)

鉱山跡地と非鉱山立地の森林における大型土壌動物の重金属濃度【A】
Heavy metal contents in soil macrofauna in former mined and non-mined forests【A】

*遠田実礼, 藤巻玲路, 山下多聞, 後藤法子(島根大学)
*Mirei TODA, Reiji FUJIMAKI, Tamon YAMASHITA, Noriko GOTO(Shimane Univ.)

土壌の重金属等による汚染は土壌動物にも影響を及ぼす可能性がある一方、山陰地方での鉱山跡地における大型土壌動物と重金属に関する研究は少ない。そこで本研究では山陰地方の鉱山跡地と非鉱山立地における大型土壌動物に含まれる重金属濃度を比較した。調査地は、鉱山跡地として若松鉱山跡地(鳥取県日南町)と大東鉱山跡地(島根県雲南市)を、非鉱山立地として島根大学三瓶演習林、島根大学匹見演習林、島根大学松江試験地をそれぞれ設定した。若松鉱山跡地では鉱山施設とズリ山、鉱山奥の蛇紋岩土壌に成育する二次林を対象とした。各調査地において大型土壌動物及び地表徘徊性節足動物を拾い取りまたはピットフォールトラップで採取した。大型土壌動物及び地表徘徊性節足動物体内と土壌、有機物層の重金属濃度を測定した。また一部の試料は窒素安定同位体比を測定した。 複数の調査区で採取できた分類群はクモ目、オサムシ科、ムカデ綱、ヤスデ綱、ワラジムシ目、フトミミズ科の6分類群であった。窒素安定同位体比より、ヤスデ綱及びフトミミズ科は土壌有機物層の有機物を採食しており、クモ目やオサムシ科は1次捕食者であると推測された。若松鉱山跡地の有機物層は高いCr、Ni濃度が観察され、大東鉱山跡地の有機物層は高いMo濃度及びZn濃度で特徴づけられた。同様の傾向は、若松鉱山跡地でヤスデ綱、ワラジムシ目及びムカデ綱、大東鉱山跡地でヤスデ綱、ムカデ綱の重金属濃度にも認められた。フトミミズ科及びオサムシ科の重金属濃度はCr、Ni、Moについては有機物層のパターンを反映していた。若松鉱山跡地のクモ目は非鉱山立地よりも高いNi濃度であったが、Crは双方の立地で同等の濃度を示した。これらの結果は、有機物食性の動物は餌の重金属濃度を反映しやすい一方で、重金属の種類によって食物連鎖への移行しやすさが異なり、一部の捕食者には重金属の影響が小さかったことを示唆している。


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