| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-393  (Poster presentation)

都市緑地の面積と樹種構成が生み出す微気象制御機能【A】
The urban ecosystem's impact on microclimates: The role of area and tree species composition【A】

*森健人(東京大学大学院・農学), 黒田光太郎(東京大学大学院・農学), 深野祐也(千葉大学大学院・園芸), 内田圭(東京大学大学院・農学)
*Taketo MORI(The University of Tokyo), Kotaro KURODA(The University of Tokyo), Yuya FUKANO(Chiba University), Kei UCHIDA(The University of Tokyo)

近年、世界中で都市化と都市への人口集中が進んでいる。都市化の進行に伴う課題の一つにヒートアイランド現象が挙げられており、都市緑地が発揮する微気象制御機能に注目が集まっている。夏の高温期に、樹木による日光の遮蔽と蒸散が緑地内部や周辺の高温を低減することが重要と考えられている。都市緑地の効果は主にその面積により影響されると考えられているが、都市圏における緑地の拡大は非常に難しく他の観点からも都市緑地の微気象制御機能の発揮を最大化させることが必須である。そこで、本研究はLandsatの衛星画像データから算出した地表面温度を用い、1)広域での都市緑地の種類による微気象制御機能への影響の検証、および2)緑地の植生に着目し、局所スケールでの微気象制御機能に対する影響を検証した。
まず東京都市圏の約50km四方の範囲で、1kmグリッドメッシュ解像度(約1700メッシュ)で2004年と2020年の地表面温度と土地利用の関係についてSARモデルを用いた回帰分析を行なった。結果、どちらの年でも、メッシュ内の森林や農地の面積割合が高くなるほど平均地表面温度が低くなること、また、特に森林による効果が大きいことが確認された。次に東京都市圏の19ヶ所の都市緑地において面積に応じ3~25個、計232個の調査地点で植生調査を行い(2023年9月〜10月)調査地点での地表面温度との関係を検証した。結果、針葉樹に比べ広葉樹の方が微気象制御機能の発揮に重要なことが明らかになった。
以上から、多様な都市緑地の中でも森林による微気象制御機能が重要であり、森林の機能の発揮の上で広葉樹が重要な役割を果たしている可能性が示された。都市緑地の計画、特に植栽の管理にあたり、これまであまり注目されてこなかった樹種構成による熱環境への影響も考慮することで、生態系サービスの発揮や持続可能な都市環境の創出をしていくべきではないだろうか。


日本生態学会