| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-395 (Poster presentation)
動物の道路上での轢死(ロードキル)記録はその種の確実な存在を示すデータであり、生息状況の変化や移入等のモニタリングに用いることができる。そのようなデータは、鳥獣害対策や生物多様性地域戦略等、地方自治体における野生動物管理を適切に実施するために求められている。我が国では、地方自治体においてロードキル記録が蓄積されてきた歴史がある。しかし、それらの情報は道路維持管理を主目的としてきたことが多く、モニタリングデータとしての有用性はほとんど示されていない。そこで、本研究では、茨城県つくば市における事例から、データの有用性を検証する。茨城県つくば市では年間600件以上のロードキルが市民から報告されており、市は死骸の回収日時・回収場所・動物種・写真などのデータを記録してきた。同市は山や川、農地といった緑地を多く有している一方、人口は増加の一途をたどっており、都市と郊外が共存する市といえる。そのためロードキル記録を解析することにより、都市から郊外の農村、山間部等に至るロードキルの実態を捉えることができる。また、動物種についてはイヌ・ネコという愛玩動物から、タヌキやアライグマ、ノウサギ等の野生哺乳類種が特定されている。
本研究では2017年4月から2023年3月の6年間のデータを用い、タヌキとアライグマについて分析した。タヌキは野生哺乳類種の中で最も死骸数が多く、かつ6年間を通じて全体的には死骸数は増加傾向にあった。アライグマは特定外来生物として2010年から茨城県が主導し防除計画が実施されている。ロードキルの死骸数は6年間で3倍以上に増加しており、ロードキルの死骸が回収される地域も拡大傾向にあった。本研究では、同市を都市と郊外に分け、死骸数と環境要因(人口密度,道路密度,土地利用等)の関係を解析し,ロードキル発生の時空間的変動の要因について議論する。