| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-396 (Poster presentation)
人間社会は、水の供給など、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵み「生態系サービス」によって支えられている。しかし、人間活動による生物多様性の損失や生態系サービスの劣化が懸念されている。生物多様性を保全し、生態系サービスを持続的に享受するためには、自然環境保全を目的とした施策が求められる。例えば、河川や水路においては、水辺の生態系を保全・再生することで、自然のもつ水源涵養や水質浄化などの生態系サービスを維持する施策が考案、実施されてきた。これらの自然再生事業が生態系に与えた影響を明らかにできれば、今後の事業計画の改善に役立てられる。近年、環境DNA技術による生物調査は、効率的かつ低コストで生物情報を得ることができるため、従来の捕獲を主体とする調査を補完し得る新たな手法として注目されている。環境DNAとは、水中など環境中に存在する生物由来のDNAを指す。野外で採取した水などから生物由来DNAを抽出、分析することで、その地点における生物の在・不在や生物量、生息分布を推定することが可能である。本研究では、神奈川県内を流れる3河川(相模川・酒匂川・金目川)を例にとり、魚類を対象とした環境DNAメタバーコーディングデータ(多地点)を解析することで、自然再生事業の影響を明らかにする。具体的には、自然再生事業を実施した地点(処置群)と、実施していない地点(対照群)の生物多様性指標を比較することで、自然再生事業の効果を評価した。また、生物多様性指標に加えて、魚種ごとの生態的特性に基づいた河川環境健全度指標による評価についても検討した。本発表では、推定された自然再生事業の影響を報告するとともに、今後の展望について考察する。