| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-001  (Poster presentation)

里山に関する知識・経験・認知・感情は購買行動と関連するか【O】【S】
Are knowledge, experiences, perceptions, and feelings about Satoyama landscapes associated with purchasing behavior?【O】【S】

*小林慶子(農研機構・西農研), 今井葉子(東京大学), 上市秀雄(筑波大学)
*Yoshiko KOBAYASHI(WARC/NARO), Yoko IMAI(Tokyo Univ.), Hideo UEICHI(Tsukuba Univ.)

世界的に持続可能なライフスタイルに対する関心が高まりつつある。我が国においても、持続可能な食料システム構築に向けた「みどりの食料システム戦略」が策定され、環境にやさしい農業経営をはじめとする事業者の持続性確保に向けた努力と工夫に対する市民の理解を深めて行動変容を促すことで、持続性を重視した消費を拡大することを目指している。本研究では、里山で営まれる農林業活動の生物多様性保全効果等に対する市民の知識、経験、認知、感情が、里山保全や里山関連商品の購買行動の行動意図と関連するかを、社会心理学の手法を用いて設計した全国規模のWebアンケートデータを用いて確認し、行動変容を促す要因を特定した。

2022年12月に国内在住の20歳以上の男女を対象にWebアンケートを実施し8,378人分の回答を得た(配信数:178,705;回答数:12,996;有効回答数:8,378)。このデータを因子分析し、里山に関する知識、経験、認知、感情、里山関連商品に関する知識や認知、社会的意識や関心などの傾向性に関する因子、里山や農業の保全や里山関連商品の購入に関する行動意図、購買行動に関する因子を抽出した。これらを用いて順序選択モデルを構築し、保全意図、購入意図、購買行動に影響する因子を特定した。

保全意図、購入意図、購買行動に影響する因子は、各々に特徴的なものと共通するものがあった。たとえば、「里山保全に対する自己効力感」は保全意図を高めていたが、購入意図や購買行動への影響は少なかった。一方、「里山に関する知識」や「里山遊びの経験」は購買行動を高めていたが、保全意図や購入意図への影響は少なかった。保全意図と購買行動のいずれも高める要因として「里山・農業・地域に関する専門教育の経験」や「里山活動の経験」が、購入意図を含めた三者を高める要因として「商品購入に関する知識」が挙がった。里山や商品に関する知識や里山活動の経験は、市民の行動変容に関与する可能性がある。


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