| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-002  (Poster presentation)

協同繁殖魚ネオランプロローグス・プルチャーの顔模様の個体性とその発達【S】
The facial pattern individuality and development in a cooperatively breeding cichlid fish, Neolamprologus pulcher【S】

*川坂健人(新潟大学)
*Kento KAWASAKA(Niigata Univ.)

他個体と順位や群れといった社会関係を構築する動物にとって、個体識別能力は格上の相手との無用な争いを避けたり、仲間と侵入者を区別して集団内の資源や配偶者を防衛するために有用である。ゆえに他個体を見分けるための認知能力だけでなく、他個体から認識されるための個体固有のシグナル(個体性)も進化すると考えられている。魚類においては、タンガニイカ湖に生息する協同繁殖魚のネオランプロローグス・プルチャー(Neolamprologus pulcher)が個体変異のある顔模様をもち、模様の違いに基づいて個体識別を行うことが知られている。2022年の野外観察では、N. pulcherの稚魚は顔模様を持たないが、ヘルパーサイズに成長した個体では明瞭な模様が現れることが明らかになった。また、明瞭な顔模様は手伝い行動(巣のメンテナンス、防衛)ではなく、他のヘルパーに順位行動(優位/劣位ディスプレイ)を示す回数に伴って発達することが示唆された。本年は野外観察に加えて稚魚の写真を改変したモデルを提示する水槽実験を行った結果、稚魚特有の形態(大きな目、頭高/頭長比など)よりも顔模様の明瞭さが他個体からの順位行動を引き起こすことが明らかになり、改めて個体固有の顔模様が本種の社会関係に重要であることが示唆された。


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