| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-005 (Poster presentation)
人口減少や高齢化に伴い里地里山の維持・管理が困難になっている。日本全国を対象に実施した無居住化集落とその近隣の人が暮らす集落における里山指標植物(草地性草本種)の分布調査によって、無居住化集落でも居住集落と同程度に草地性種の多様性が維持される地域(東北)と減少する地域(東山、中国・九州北部)があることが明らかとなった。東北で維持されて他の地域で維持できない理由として、離村後の里山利用に差がある可能性がある。そこで本研究では、里山構成種の多様性の維持に貢献する活動とその活動に対する住民の意識に地域差があるかを確認するため、まずは多様性が維持されやすい東北から複数の集落を選択し、住民による管理作業の内容と、住民の里山や管理作業に対する意識を整理した。
福島県内の4集落(居住集落2、無居住化集落2)において、過去と現在の1)里山の利用状況・頻度、2)採取している資源、3)管理内容、4)里山に対する意識について、対面式の半構造化インタビューを実施した。各集落から計11名の回答が得られた。回答の結果、里山の利用状況・頻度と採取している資源は、住民の生活や季節行事と強く関連しており、里山の資源利用を介して複数の動植物の名前が列挙された。これは過去の利用で顕著だった。現在の利用状況は、居住集落と無居住化集落の両方で管理内容および生活に利用する植物の種類、頻度が過去より減少していた。一方、現在も各集落で草刈りなどの一部の定期的な管理は行われていた。里山での活動や享受する資源に対する意識では、居住集落と無居住化集落の住民両方に共通する項目が多く挙げられた。課題として、回答した住民数が少ないことや結果が個人に依存することが挙げられる。今後、草地性種の多様性が維持されにくい東山、中国・九州北部でも同様の調査を行い、離村後の管理様式が居住時とどう変わったか等の地域差の有無を調査する必要がある。