| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-006 (Poster presentation)
生物多様性情報収集のために、野生生物写真等の投稿に特化したプラットフォームを用いる取り組みが近年注目を集めている。このような市民科学の手法を用いた情報収集を拡充させるには、多様な人々の参画と投稿を促す必要がある。しかし、現状では自然や生物多様性への関心が高い人々の参加・投稿に偏る課題がある。そこで、ソーシャルメディアを積極的に活用し、生態系の文化的サービスを享受していることを「表明」している人々へのアプローチを提案する。森林等の自然地域にて撮影された写真がソーシャルメディアに投稿された時、生物多様性の恵み(生態系の文化的サービス)が投稿者にとって価値あるものとして「表明」されたと解釈できる。そのような人々は、野生生物の写真を撮影する機会に恵まれており、インターネット上での情報行動への敷居が低く、多くのデータを提供し得る人材と考えられる。そこで、人々が森林等で何を撮影し、ソーシャルメディア上で共有することに価値を置いているのかに着目した。
本報告では、茨城県の森林緑地「牛久自然観察の森」に関連するGoogle map上での投稿写真1,064枚と、その投稿ユーザー136人の分析結果を紹介する。それぞれのユーザーについて、緑地への写真投稿枚数、訪問回数、ソーシャルメディア上における活動実績の指標を用いることでクラスタリングを実施し、ユーザーの情報行動の特徴を分類した。そして、投稿された写真の主対象を特定し、主対象が生物の場合には可能な限り種同定を実施し、その種の地域での扱いを分類した。最後に、ユーザーの特徴と投稿された主対象の関係性を分析した。結果にもとづき、生物多様性情報の収集につながる投稿をするユーザーの特徴を考察し、市民科学を推進していくための、ソーシャルメディアユーザーを対象とした効果的なアプローチ手法を提案した。