| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-007  (Poster presentation)

半自然システムと人新世【発表取消/Cancelled】【O】【S】
Semi-natural systems and the Anthropocene【発表取消/Cancelled】【O】【S】

*須賀丈(長野県環境保全研究所)
*Takeshi SUKA(Nagano Env Conserv Res Inst)

 人新世は、人間活動が地球システムに痕跡を残す地質時代として提唱されている。地質学的な検討では1950年頃をその起点とする案が有力となっており、人間活動の多くの指標でもこの時期以降に大加速が生じている。多くの議論は産業革命とその影響にも人新世を関連づけており、その明瞭な指標とされるのが化石燃料の利用と温室効果ガスの排出である。これにより地球システム科学などの自然科学と歴史学などの人文諸科学の間に広範な議論の接合面が生じている。
 こうした議論の多くは完新世から人新世への移行により自然と人間の関係が大きく変化したとしている。しかしそうした議論は、完新世の自然と人間との関係をそれ自体として主題にしているわけではない。そこで本論では、完新世の生態系と人間活動との関係を、人新世との対比として概念的に整理する。
 人間は先史時代から自然界に大きなインパクトをあたえてきた。火の使用、メガファウナの絶滅、新石器革命などがその例である。こうした生態系の改変は完新世に顕在化したが、ローカルなものにとどまっていた。このように改変された生態系は、手つかずの自然ではなく半自然の領域である。半自然領域での狩猟、農耕、牧畜や生物資源の利用は、衣食住を獲得するための技術や知識、文化に支えられていた。そのようなかかわりを半自然システムと総称することができる。半自然システムは、舞台となった多様なバイオームに応じて多様な文化を生んだ。これが生物文化多様性であり、人新世の影響で失われつつある。
 日本では、明治以来の近代化によりローカルな資源利用に依存した農耕社会からグローバルな資源利用に依存する産業社会に移行した。1950年以降の大加速は、日本社会の資源利用にも、石油の輸入の急増、半自然草原の急減などとして現れた。人新世の危機を脱し、次の時代への移行を導く形でいかに半自然システムを再生させていくかが今後の重要な課題である。


日本生態学会