| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-010 (Poster presentation)
温暖化・降水変化・海面上昇など、現在進行中かつ将来の拡大が予測されている気候変動の影響は、さまざまな分野に広がっている。洪水・高潮・土砂災害などの災害リスクに対する持続可能な適応の方策として、生態系を活用した防災減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction, 以下Eco-DRR)がある。Eco-DRRは、生態系がもつ防災減災機能を利用しつつ、生態系や生物多様性が提供するさまざまな生態系サービスを享受しようとする、多機能性を求めた適応の方策である。Eco-DRRという用語は近年になって国内外で使われだしたが、実は、日本における災害対応には古くからある考え方でもある。伝統的な災害対応では、自然がもたらす災いが起きる場所や災いの特性をよく理解したうえで、生態系や生物多様性がもたらす豊かな恵みを失わない配慮や工夫がなされてきた。自然がもたらす災いと恵みの深い関わりがよく考慮された災害対応である。また、災害への伝統的な対応は、災害を避け被害を減らすだけでなく、災害からの復旧復興にも活かされてきた。しかし、残念ながら、地域の文化とも言える伝統的な災害対応は失われていく一方である。
総合地球環境学研究所Eco-DRRプロジェクトが発刊したシリーズ「地域の歴史から学ぶ災害対応」では、日本各地で今なお活躍する伝統的な災害対応の事例を収集し、現代社会における意義を分析し、地域での保全や活用の方策を検討している。本講演では、これを紹介する。なお、シリーズ「地域の歴史から学ぶ災害対応」の電子版は、地球研ウェブサイトで無料で公開されている。