| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-014 (Poster presentation)
ミカンコミバエ種群は東南アジアを中心に広く分布し、世界各地に侵入している果菜類の深刻な害虫である。ミカンコミバエの防除対策のひとつに不妊虫放飼法(SIT)がある。SITは対象害虫の不妊化したオスを野外に大量放飼して野生虫の交尾機会を奪い、防除する方法である。そのため、SITによる対象害虫の防除効果は、不妊オスが野生メスと交尾する際の交尾競争力に大きく依存する。したがって、交尾競争力に優位な個体群を不妊虫として利用できれば、防除効率の向上が期待できる。現在、沖縄県病害虫防除技術センターには、防除の際にサンプリングされた、3つのミカンコミバエ個体群(石垣、伊江、読谷)が系統保存されている。これら3つの個体群は、遺伝的背景が異なることが示唆されている。本研究ではこれら3つの系統のうち2系統のオス各40頭と同系統のメス20頭を同じケージに入れ(合計、オス:メス=80:40)(実験①)、交尾時間終了後、形成ペアの系統を記録した。次に、オスの交尾回数を調べた。8頭の未交尾オスを同一ケージに飼育し、同数の未交尾メスを導入した。交尾後、各オスの交尾の有無を記録した。メスは2週間毎日入れ替えた(実験②)。実験①では、ペアの組み合わせは雌雄の系統間の交互作用が有意であり、同じ系統と交配する傾向が見られた。読谷も同じ傾向があったものの他系統との交尾数も多く、交尾能力が他系統に比べて高いことが示唆された。実験②では、オスの交尾回数は系統によって異なることが示された。読谷系統のオスは石垣、伊江系統よりも有意に多く交尾した。石垣系統は伊江系統よりも多く交尾したが、統計的には有意ではなかった。本研究では、雄の交尾能力が個体群によって異なることを示した。そのため、SITで大量飼育する系統を決定する際には、交尾競争能力の個体群差を考慮する必要があると考えられる。