| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-015 (Poster presentation)
北アルプス山麓部では2000年代入ってから初めてニホンジカの分布が確認され、2010年以降は高山帯でもニホンジカが徐々に目撃されるようになり、分布域が拡大傾向にある。長野県の調査では、北アルプスの白馬村で推定生息密度の高い状況が確認され、森林生態系への影響が懸念されている。本研究では、高山域と隣接する分布拡大域におけるニホンジカの季節移動パターンを類型化することを目的として、北アルプス北部山麓の大町市において2012~2022年にGPS首輪を装着したニホンジカの個体追跡調査を行った。GPS首輪の測位間隔は2~4時間に設定した。7ヶ月以上個体追跡できた57頭(オス27頭、メス30頭)の移動パターンを類型化した。このうち1頭は、異なる年に2回捕獲された。10~17ヶ月齢の若齢個体6頭(オス1頭、メス1頭)は分散個体だった。分散個体を除く51頭の84%が季節移動個体、16%が定住個体であり、当地域に生息するニホンジカの大部分が夏季と冬季の季節行動圏間を往復する季節移動個体ということが明らかとなった。季節移動パターンは個体により異なり、小規模な移動から北アルプスの主稜線を越える大規模な移動をするなど多様な動きを示した。定住個体はいずれも同一地域で行動圏が重複した。年間を通した利用標高は定住個体760~2,031mだったのに対し、季節移動個体440~2,840mとなり、季節移動個体では高山域まで利用する個体を確認した。分散個体したオス5頭の分散距離はいずれも50km以上だった。分散後に定着した地域の多くはニホンジカのほとんど生息しない地域であった。