| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-021  (Poster presentation)

ユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica)地域個体群の創出および維持機構の推定
Estimation of mechanisms for the creation and maintenance of local populations in Porites cylindrica

*磯村尚子(沖縄工業高等専門学校), 佐野亘(岡山大学), 銘苅海星(沖縄工業高等専門学校), 中野義勝(OIST), 横山祐典(東京大学), 宮入陽介(東京大学), 菅浩伸(九州大学)
*Naoko ISOMURA(NIT, Okinawa College), Wataru SANO(Okayama University), Kaisei MEKARU(NIT, Okinawa College), Yoshikatsu NAKANO(OIST), Yusuke YOKOYAMA(the University of Tokyo), Yosuke MIYAIRI(the University of Tokyo), Hironobu KAN(Kyushu University)

 ユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica)は枝状の形態を示し、インド太平洋に広く分布する。琉球列島において数十から数百mの大規模集団が各地で発見されており、フィールドおよび実験下で白化に対する耐性も示されている。海水温上昇に伴うサンゴの白化が頻発する近年の環境下において、ユビエダハマサンゴ大規模集団は、サンゴ礁生態系における重要な役割を担うと予想される。そこで本研究では、沖縄本島周辺にみられるユビエダハマサンゴ大規模集団の形成過程及び維持機構について、複数の手法を用いて推定することを目的とした。
 伊平屋島、瀬底島、大浦湾、金武湾および安室島の集団を対象とした。各集団30-40群体から枝片を採取し、DNA抽出および集団遺伝構造解析、各群体の性構成と集団の性比確認を行った。瀬底島集団では繁殖行動と受精率、プラヌラ幼生の生存率を確認した。伊平屋島を除く4集団についてボーリング調査、コア断面の観察および14C年代測定を行った。
 集団間において有意な遺伝的分化がみられ、全集団でクローン群体が検出された。雌群体、雄群体および雄機能が優占した雌雄同体群体が確認されたが、その比は集団で異なっていた。雌雄で配偶子放出ピークがずれ、受精率は低く、自家および他家受精間で幼生の生存率に差はなかった。1840-1850年頃に対象域に集団が出現し現在まで持続していること、年代により成長速度が異なることが示された。
 以上から、対象とした集団は同時期の加入で形成され、約185年をかけて環境に応じた成長をしてきたと予想される。集団が小さい際には性比が雄に偏り群体の成長が優先され、雌雄同体群体による自家受精由来幼生の加入により集団が拡大すると考えられた。その後、集団拡大に伴う雌群体数増加により受精機会が増え、少数ながらも他家受精由来幼生が加入し集団とその遺伝的多様性が維持されていると考えられた。


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