| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-022 (Poster presentation)
異型配偶子での有性生殖の維持は、進化生物学における重要課題のひとつである。なぜなら、有性メスは直接子孫を残すことができないオスの生産に資源を投入しなければならず、Fisher性比下では有性生殖個体群の成長率は単為生殖個体群の半分になるからである(有性生殖の2倍のコスト)。先行研究では、有性生殖に特有の遺伝的利益、すなわち有害突然変異の除去や進化スピードの早い寄生者に対する対抗に焦点が当てられてきた。それらとは別に、理論研究から、有性生殖システムの維持が性的対立の副産物であるという仮説が提唱されている。配偶における雌雄間の適応度上の利害対立は、オスの有害性とメスの抵抗性との共進化を促す。オスがメスに対して無差別に配偶行動を行う場合、進化過程をオスと共有しない単為生殖メスは、性間の拮抗的共進化から取り残され、有害なオスの影響を受けやすいと考えられる。本仮説を検証するために、我々は有性・単為生殖系統が同所的に共存する農業害虫ネギアザミウマを用いた実証研究を行なっている。以前の研究では、単為系統メスは同居オス数が多いほど生存日数が短くなる一方で、有性系統メスの生存日数にはオス数の影響がみられないことを示した。本研究では、より自然条件に近い個体数規模においても単為系統メス特異的な適応度コストが生じるかどうかを検証した。単為系統・有性系統の個体を様々な個体数で導入し、1週間後の各系統メスの生存率と1個体あたりの産卵数を調べた。それらの適応度指標データに対して、オス頻度に依存した効果を組み込んだ個体群モデルを当てはめ、パラメータのベイズ推定と系統間での比較を行った。単為系統へのオスの有害性を、種間での繁殖干渉と関連づけて議論する。