| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-028  (Poster presentation)

千葉県北部におけるニホンアカガエルの生息地評価と集団構造
Evaluation of habitat suitability and genetic structure of Japanese brown frogs Rana japonica in the northern area of Chiba prefecture.

*松島野枝, 平野佑奈, 今藤夏子, 西廣淳(国立環境研究所)
*Noe MATSUSHIMA, Yuna HIRANO, Natsuko KONDO, Jun NISHIHIRO(NIES)

ニホンアカガエルRana japonica Boulenger, 1879は千葉県では絶滅リスクが高い両生類であり、ほ場整備や耕作放棄によって産卵場所となる湿地の喪失がその主な減少要因とされている。また、ニホンアカガエルは非繁殖期には主に林縁や草地を利用するため、産卵場所周辺の土地利用あるいは植生も生息に影響を持つと考えられる。現状として、千葉県北部では、谷底に湧水による湿地が形成され、周辺に斜面林が形成されるような谷津田がニホンアカガエルの主要な生息場所となっている。そのため、ニホンアカガエルの生息環境としての評価は、湿地周辺の景観を含めた湿地性生物の生息地評価となるだろう。本研究では、千葉県北部において、ニホンアカガエルの生息地の景観要因を把握するため、野外調査とニッチモデリングによる生息地の分布推定を行った。野外調査により取得した生息地点情報と、景観要因として土地利用、その他の環境要因として地形と気候を用いてMaxEntによって潜在的な生息地の分布を推定した。景観要因ごとに影響を持つ範囲が異なることを想定するモデルを検討した結果、水田と人工地よりも広い範囲での森林面積の割合が存在確率に影響を持つモデルが採用された。このモデルを対象地域に当てはめて作成した生息適地マップからは、周辺に生息適地と判定された場所がほとんど無い生息地や、生息適地があるにも関わらず生息地がほとんど見つからなかった地域が見られた。ニホンアカガエルは湿地を再生することで個体数が増加する事例があることから、今後は、湿地を再生した場合に近隣の他集団からの自然な移入の可能性を評価するため、生息地周辺の植生や、生息地間の関係を明らかにするために対象地域の集団の遺伝構造を把握する予定である。


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