| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-031 (Poster presentation)
動物福祉の観点から、野生動物の追跡調査をする際には使用する首輪などの装具の軽量化や装着期間を短くするなどの配慮をすることが望ましい。野生動物の行動圏は、装具に取り付けた全地球測位システム(GPS)機器などを用いて測位した動物の位置情報を基に推定される。位置情報の数が多いほど推定される行動圏の正確さは増加するが、取得する位置情報の測位頻度と調査期間を増やすほど電池も大型化する。正確な行動圏推定のために最低限必要な測位頻度と調査期間について明らかにすることを目的とした。GPS機器などの電子機器は電池寿命によって取得できる位置情報の数は制限を受けるため、実際の野生動物を対象とした高頻度かつ長期間の位置情報を多く入手することは困難である。本研究では、計算機を用いて疑似的に中型哺乳動物の位置情報を15分間隔で1080日間(約3年間)発生させ、これを元データとした。元データから測位頻度(最低頻度: 1点/日)と調査期間(最短期間: 7日間)を減少させたデータを操作データとした。元データを基に推定した行動圏を真の行動圏と定義し、操作データを用いて固定カーネル法(KDE)や自己相関を考慮したカーネル法(AKDE)で推定した行動圏を推定行動圏とした。KDEの場合、測位頻度の減少とともに推定行動圏が大きくなる一方、調査期間の減少とともに推定行動圏が小さくなる傾向があった。AKDEの場合、測位頻度の減少が推定行動圏へ与える影響は少ないが、調査期間の減少とともに推定行動圏が小さくなる傾向があった。測位頻度が1日1点以上かつ調査期間が180日以上あれば真の面積に対する推定行動圏の予測誤差は20%未満になることが示された。これらの結果から、中型哺乳動物の場合、少なくとも1日1回の測位頻度で半年の調査期間が可能な電池であれば精度の高い行動圏推定が得られる事が示唆された。