| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-033  (Poster presentation)

2年間のネコの集中捕獲が在来海鳥と外来ネズミ類2種に与える影響:御蔵島の事例【O】
Effects of two year intensive exclusions of the introduced cats on a native seabird and two introduced rodent species: the case of Mikura Island【O】

*徳吉美国(東京大学), 飯島勇人(森林総合研究所), 岡奈理子(山階鳥類研究所), 亘悠哉(森林総合研究所), 宮下直(東京大学)
*Mikuni TOKUYOSHI(University of Tokyo), Hayato IIJIMA(FFPRI), Nariko OKA(Yamashina Inst. for Ornithol), Yuya WATARI(FFPRI), Tadashi MIYASHITA(University of Tokyo)

複数の外来捕食者が侵入した生態系では,外来の上位捕食者の除去が外来の中位捕食者の増加を引き起こし,在来種への影響が悪化する可能性がある.このような現象はメソプレデターリリースと呼ばれており,その生起を予測することは,在来種を回復させるための重要な課題である.
本研究では,2年間の集中的なネコの個体数管理(捕獲・譲渡)が行われた伊豆諸島の御蔵島において,ネコの減少が外来ネズミ類(ドブネズミ・クマネズミ)とオオミズナギドリに与える影響を検証した.自動撮影カメラでネコの密度,巣穴モニタリングでオオミズナギドリの繁殖成功,生体捕獲(捕獲除去・標識再捕獲)でネズミのCPUE・個体数を調査した.
その結果,集中捕獲後にネコが減少した調査サイトほど,オオミズナギドリのヒナ生存率が増加する傾向が確認された.一方で,ネコの密度変化とネズミ類のCPUEとの間に相関はほどんど見られなかった.また,標識再捕獲調査では,ドブネズミの個体数がネコの集中捕獲前よりも低下している傾向にあった.
以上の結果から,御蔵島においては,今後さらにネコを減らしていくことで,オオミズナギドリの繁殖が改善されていく可能性が示された.また,ネコの減少に対するネズミ類の顕著な増加が確認されなかったことは,ネズミ類へのトップダウン(捕食)だけでなくボトムアップ(海鳥などの餌生物・ネコの食べ残し)の影響も統合的に考えることが,この4種の群集動態を理解する上で重要であることも示唆している.


日本生態学会