| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-034  (Poster presentation)

土壌微生物群集の動的スペクトラル分解
Dynamic spectral decomposition of soil microbial community

*長田穣, STARILeonardo, 加藤広海, 永田裕二, 大坪嘉行, 近藤倫生(東北大学)
*Yutaka OSADA, Leonardo STARI, Hiromi KATO, Yuji NAGATA, Yoshiyuki OTSUBO, Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

土壌の有機物の分解において微生物の活動は重要な役割を担っている。堆肥など自然由来のものから農薬など人工的なものまで、様々な有機物の付加に対して土壌微生物は異なる群集構造を形成することが知られているが、安定した群集構造が形成されるまでの遷移に関する理解は限定的である。本研究では、分解しやすさの異なる有機物に対する土壌微生物の遷移の違いやその違いを引き起こす原因を探るため、5つの異なる炭素源(グルコース、コハク酸、ナフタレン、フェナントレン、γ-HCH)における土壌微生物の培養実験とその微生物群集データの解析を行った。実験における具体的な手順は次のとおりである。異なる炭素源を添加した液体培地に同じ土壌菌叢を接種し2週間ほど培養した。試料は12時間ごとに採取され、定量PCR分析とメタバーコーディング分析によって試料中に含まれる各OTUの存在量が測定された。接種した土壌菌叢は情報蓄積のある褐色森林土から採取されたものを用いた。データ解析では、まず群集組成に対して多変量解析を実施した。微生物群集は炭素源ごとに明らかに異なる遷移をしていたが、同じ炭素源におけるリプリケートの遷移は非常に似通っていることが分かった。次に、土壌微生物の遷移を駆動するOTUを見つけるため、微生物群集の時系列データに対して動的スペクトル分解を行った。主要な動的モード(微生物群集全体で共有される存在量の変化)とそのモードに重要なOTUを特定した。動的モードによって特定されたOTUの変化要因を検討することで、各炭素源に対して土壌微生物の遷移が異なる原因を考察したい。


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