| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-037  (Poster presentation)

シカは嗅ぎ、キツネは擦り、鳥はつつく—ヒグマのマーキングサイトにおける他種利用【O】
Deer sniff, foxes rub, birds peck—Use of brown bear marking sites by other animals【O】

*勝島日向子, 小泉逸郎(北海道大学)
*Hinako KATSUSHIMA, Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ.)

匂いコミュニケーションは多くの哺乳類にとって重要な情報交換手段であり、目立つ岩や木などに匂いを付着させた「マーキングサイト」を拠点に戦略的に情報の送信・受信をする。これまでは種内コミュニケーションの文脈でマーキングサイトの利用が調べられてきたが、近年これらのサイトが異なる種にも利用される実態が明らかとなってきた。また、先行研究は主に哺乳類同士のマーキングサイト利用に着目しており、他の分類群の利用可能性に関してはほぼ知見がない。そこで北海道のヒグマのマーキングサイトが他の動物たちにどれくらい利用されているのかを明らかにした。2022年、2023年の非積雪期に北海道北部の天塩研究林に赤外線カメラを設置し、約2000回の撮影イベントを得た。その結果、シカはマーキングサイトを積極的に利用しており、これは潜在的な捕食者であるヒグマの情報を得るためだと考えられた。また、キツネをはじめとする4種の中型食肉類もマーキングサイトの積極的な利用が確認された。さらに、キツネはマーキングツリーに対する擦り行動を示し、これはヒグマの匂い付けによる化学カモフラージュの可能性がある。齧歯類3種についてもマーキングサイトで探索行動やラビング行動を示した。これらはヒグマの情報を入手したり匂いを身体に付着させることによって捕食を防ぐ対捕食者行動の一環である可能性がある。鳥類にいたっても、マーキングサイトにおける約1/3の撮影イベントで採餌行動が確認された。これはヒグマが樹皮剥ぎなどをすることによって餌となる昆虫が集まっているのかもしれない。以上のことから、ヒグマのマーキングサイトは種間コミュニケーションや生態系エンジニア効果のために森林内の多くの動物種が利用する場所であると考えられる。


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