| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-039  (Poster presentation)

温暖化と殺虫剤が水田生物群集に与える複合的な影響:相互作用ネットワークの視点から
Combined effects of warming and insecticide on aquatic communities in experimental paddies: Does the interaction network matter?

*橋本洸哉(国立環境研究所, 弘前大学・農生), 角谷拓(国立環境研究所)
*Koya HASHIMOTO(NIES, Hirosaki Univ.), Taku KADOYA(NIES)

グローバルな気候変動の下で農地生態系を維持・管理していくためには、温暖化条件下で農薬施用等のローカルな人間活動が生物にどのような影響を与えるのかを理解・予測することが有効である。温暖化は農薬の毒性を上昇させるという室内試験をもとにした指摘がある一方、逆の結果を示す報告もある。特に生物間相互作用のような複雑な野外条件を考慮した場合には、温暖化と農薬の複合的な影響の予測は難しく、野外の生物群集を対象に複合的な影響を検証した研究は極めて少ない。そこで本研究では、温暖化条件の下で、農薬が生物群集に与える影響を評価するため、屋外に設置された水田模擬生態系を使用し、ヒーターによる加温処理と農薬処理を組み合わせた要因実験を行った。薬剤として、先行研究でトンボ類に強い毒性をもつと明らかになっている殺虫剤フィプロニルを選定した。加温処理はコントロールの水温をモニタリングし、そこから常に4℃高くなるように操作した。実験は2021年6~11月にかけて行い、田面水中の群集メンバーの密度を週に1回測定した。実験の結果、先行研究通り、フィプロニルによってトンボ類の個体数が大幅に減少した。実験処理は、昆虫類やサカマキガイ等で構成される大型動物群集組成には有意な影響を与えなかった。一方で、動物プランクトン群集組成については加温処理によって顕著な変化が観察された。さらに、フィプロニル処理は、加温の有無によってそれぞれ異なる方向に動物プランクトン群集組成を変化させた。非線形時系列解析による相互作用ネットワーク解析の結果、こうした加温とフィプロニルが群集組成に与える非相加的影響の一部は、動物プランクトン種間の相互作用ネットワークを伝わる影響の経路の違いによって説明される可能性が示唆された。


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