| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-040  (Poster presentation)

2010年~2016年に生じた海洋熱波が北海道南東部の潮間帯生物の群集構造に与えた影響
The impact of marine heatwaves during 2010-2016 on rocky intertidal community structure in the southeast of Hokkaido

*石田拳(北大・院・環境, 水産機構(現在の所属)), 姚遠(北大・院・環境), 和田葉子(宮崎大学), 野田隆史(北海道大学)
*Ken ISHIDA(GSES,Hokkaido Univ., FRA(Present address)), Yuan YAO(GSES,Hokkaido Univ.), Yoko WADA(Miyazaki Univ.), Takashi NODA(Hokkaido Univ.)

数十年前と比べて海洋熱波の発生頻度・強度が増加している。このため、近年、熱波に対する海洋生物の応答を調べた研究が注目されている。熱波の発生頻度は今後も増加すると予測されていることから、複数年に渡って連続した海洋熱波の影響を理解することは特に重要である。そのため、熱波が生物に与えるaccumulative carryover effect (熱波の発生から経過年数に応じて応答変数が継続的に増加または減少すること) を評価することは急務であるが、これまでの研究では、accumulative carryover effectがアバンダンスに与える影響しか評価されていない。また、海洋熱波が生物に及ぼす影響を評価した先行研究では、熱波以外の環境の確率的な影響が排除されてこなかったものが大部分である。
 そこで、本研究では、2010~2016年夏に北海道南東部で発生した海洋熱波に対する岩礁潮間帯生物群集の応答を15年間の調査データを用いて熱波以外の環境変動の影響を分離し、(1)岩礁潮間帯群集の機能群 (大型藻類、固着性無脊椎動物、植食性軟体動物、肉食性無脊椎動物) のHill numbers (q = 0の総種数、q = 1のShannon entropyの指数、q = 2のSimpson多様度の逆数) において海洋熱波のaccumulative carryover effectが検出されるか? (2)海洋熱波に対する応答とその後の回復は機能群のHill numbers間で異なるか? の2点について評価した。
 その結果、(1) Hill numbersの全ての指標(q = 0、1と2)で海洋熱波のaccumulative carryover effectが生じなかったことが明らかになった。 また、(2)海洋熱波発生中および発生後2年目までの期間、固着性無脊椎動物の総種数(q = 0)、普通種の割合 (q =1)、優占種の割合 (q = 2) の全てが増加した。これは希少種を含む総種数の増加によって群集がより均等になったためと考えられる。一方、肉食性無脊椎動物では希少種を含む総種数 (q = 0) が減少していたが、普通種の割合 (q =1) と優占種の割合 (q = 2) は発生前と変わらない状態を示した。


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