| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-045 (Poster presentation)
水稲有機栽培では雑草防除が重要な課題になっている。エラミミズやユリミミズ等の水生ミミズを増やして抑草する方法が提案されており、実際に個体数が多い水田では一年生雑草が抑草できることが示されている。そのメカニズムとして、水生ミミズは土と有機物を摂食し、田面に糞を排泄するが、ミミズの口が小さくコナギなどの一年生雑草の種子は食べられないため糞に埋もれ発芽が抑制されることが挙げられている。しかし、効果的に雑草を抑制する水管理は明らかになっていない。水生ミミズの活動により田面水が濁ることがあり、この濁りは光強度に影響を及ぼす。しかし、水をかけ流しにした場合濁りの効果は減少すると考えられる。そこで本研究ではポット実験で水の入れ替え頻度を変えることにより、コナギの出芽や定着に影響を及ぼすかを評価した。
水生ミミズと土壌は広島県福山市の水田で採取した。土は風乾後2mm以下にした。プラカップに土を入れた後に蒸留水を添加し、低温で休眠打破したコナギの種子30粒を土壌表面に添加した。糞堆積速度(mm/day)はミミズの個体数を変えることにより変化させた。糞堆積速度は1週間ごとに測定した。水の入れ替え処理は、1~3日毎の短期間区と1週間毎の長期間区の2処理を設けた。水温は25℃とし、光量子は140 µmol m-2 s-1で12時間点灯とした。3週間後のコナギ定着量(出芽後の生存数)と糞堆積速度の関係を調べた。
水の入れ替え頻度と糞堆積速度を説明変数としコナギ定着量をGLMで解析した結果、水の入れ替え処理、糞堆積速度とも有意に影響を及ぼし、両変数間に交互作用が認められた(p<0.01)。両水処理区とも糞堆積速度が速くなると定着量が低下した。折れ線回帰でそれぞれの水処理区での変曲点を調べたところ、短期間区で1日に0.52mm、長期間区で0.26mmの糞堆積となった。水の入れ替えが長期になれば、水を滞留させることで、濁りを維持させ少ない堆積速度でも3週間後のコナギの定着量を低下させた。