| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-046  (Poster presentation)

環境DNAメタバーコーディングデータの統計解析のためのRパッケージの開発と適用
Development and application of an R package for statistical analysis of environmental DNA metabarcoding data

*深谷肇一(国立環境研究所), 長谷部勇太(神奈川県環境科学セ)
*Keiichi FUKAYA(NIES), Yuta HASEBE(Kanagawa Env. Res. Cent.)

 種の分布を効率的かつ非侵襲的に評価するための手法として、環境DNAメタバーコーディングの利用が広がっている。環境DNAメタバーコーディングでは、サンプルに含まれる標的遺伝子配列の読み取り回数であるリード計数がデータとして得られる。近年、リード計数の変動を説明する多種サイト占有モデルの枠組みが提案され、多地点での環境DNAメタバーコーディングの結果に基づく種のサイト占有確率の推定や効果的な種検出を可能とする調査デザインの予測が可能となった。しかし、この手法を用いるためにはベイズ推定のための確率的プログラミング言語(JAGSなど)を用いてモデルを記述する必要があるなど、多くのユーザーにとって扱いやすいものとはなっていなかった。
 本講演では、上記の多種サイト占有モデルのベイズ法による当てはめと、当てはめたモデルに基づく推論をより簡便に行えるよう開発されたRパッケージoccumbを紹介する。occumbでは、Rで線形モデルなどの解析を行う場合と同様に、formula構文を用いてモデルを容易に指定できるようになっている。モデルの当てはめ結果を用いて所与の調査デザインの下で期待される検出種数を予測する関数も備えているため、種の検出可能性を考慮した調査デザインの検討にも役立てられる。
 本講演ではまた、occumbパッケージを用いて底生無脊椎動物の環境DNA配列の検出可能性を評価した事例研究を紹介する。神奈川県内の河川20地点でろ過水量を変えながら採水し、MtInsects-16Sプライマーを用いて環境DNAメタバーコーディングを行った。解析の結果、DNA配列の検出可能性には種間で大きなばらつきがあること、また、サンプルあたりのろ過水量やシーケンス深度を増やすよりも、生物学的反復を増やす方がより確実な種の検出につながることなどが明らかとなった。


日本生態学会