| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-047  (Poster presentation)

北海道日本海沿岸における岩石穿孔性二枚貝の生息環境【O】
Habitat of rock-boring bivalves in the Japan Sea coast of Hokkaido【O】

*新井慧(水産研究・教育機構)
*Satoi ARAI(FRA)

古環境を推測することは、近年の環境変動を巨視的にとらえるために重要である。効果的な古環境の推測手法として現地性の高い示相化石の利用が挙げられる。例えば、岩石穿孔性二枚貝は、潮間帯の岩石中に巣穴を穿孔し一生を終えること、岩石穿孔性二枚貝が残す巣穴の生痕は種によって異なること、という点から高い現地性を持つ。これらの特徴から岩石穿孔性二枚貝の生痕化石は古生態学の分野において不整合の認定や潮間帯を示す示相化石として用いられてきた(紺野・松浦 1964)。従って現生岩石穿孔性二枚貝の生態を明らかにすることは、岩石穿孔性二枚貝の示相化石としての精度を向上させうる。しかし、岩石穿孔性二枚貝の生態に関する研究は、鈴木(2000)による現世・更新世岩石穿孔性二枚貝類とその古生態学意義に関する研究や、伊藤(1994)、田島・近藤(2003)による穿孔基質と穿孔方法に関する機能研究的な研究にとどまっており、現生岩石穿孔性二枚貝の生態に関する研究は少ない。例えば、岩石穿孔性二枚貝の生息域は主として潮間帯付近の岩礁性海岸に限られるため、種構成の特徴から生息環境を決定する要因を推測できる可能性がある。そこで本研究では、現生岩石穿孔性二枚貝の生態を明らかにするため、北海道日本海沿岸の転石と転石に穿孔する岩石穿孔性二枚貝を対象に、(1)岩石穿孔性二枚貝の穿孔する岩石の種類と生痕種との間に対応は見られるのか。(2)岩石穿孔性二枚貝の種構成は岩石の種類によって異なるのか。という2つの仮説を検討した。その結果、(1)岩石種と生痕種との間に対応が見られ、岩石種に特有の生痕種とすべての岩石種に出現する生痕種があること。(2)岩石種によって種構成が異なる可能性があること。の2点が示唆された。これらの結果は、現生岩石穿孔性二枚貝の生態をより明確にし、古環境の推定精度の向上に貢献したと考えられる。


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