| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-048 (Poster presentation)
トビムシは生態系の撹乱に対して群集構造を変化させることが知られている。その群集構造の変化には、体長、真土壌性指標(EAS)などを含む形質構造の変化を伴うとされている。多くの生物の分類群で、撹乱後の遷移初期に見られるグループが見られ、それらのグループでは形成された新たなハビタートへの定着に適した形質を持つとされている。本研究では、森林のトビムシ群集においてもそうした形質構造が確認されるかを、実験的手法を用いて検証した。ここでは、未破壊で採取した落葉層を凍結することによって土壌動物を殺虫し、それを再度元の林床に埋め戻し、それを3日以降放置した後に採取してトビムシ群集を抽出し、未凍結のサンプルから得られたトビムシ群集と比較するという方法を用いた。
2016年〜2017年の高知県のヒノキ人工林とそれに近接する落葉広葉樹林調査では、凍結殺虫した落葉層を現地に設置後7日、1ヶ月、12ヶ月、16ヶ月後に採集したが、設置後7日目でもかなり多くの個体数のトビムシが定着する事がわかった。このため、初期に定着する種の動向を見るため2019年の京都府のヒノキ天然林で行った調査では、日程を短縮して、設置後3日、10日、30日後に落葉層を回収してトビムシを抽出する事とした。
2カ所いずれの調査においても、凍結後のハビタートには、体長が大きい種、表層性の種(EASが低い)が優占すると予測したが、体長が小さい種や真土壌性と考えられる種でも凍結後のハビタートに速やかに定着する種も存在する事がわかった。そうした、形態的な形質から予測される反応と異なって、速やかに凍結後のハビタートに定着した種の中には、安定同位体の調査により、死体食性もしくは捕食性が示唆されるものが含まれていた。以上の結果は、同じような体サイズや住み場所であっても、摂餌などにおいて別の戦略を取る種が存在することが、トビムシ群集の速やかな回復や多様性の維持に貢献していると考えられた。