| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-051  (Poster presentation)

岩礁海岸への資源流入が貝の分布様式にが及ぼす影響
The effect of subsidy to rocky shores on the distribution patterns of snails

*和田葉子(宮崎大学), 野田隆史(北海道大学)
*Yoko WADA(Miyazaki University), Takashi NODA(Hokkaido University)

 生態系に流れ着く資源は,生態系の維持に大きく寄与している。特に,河川や陸上の生態系では,資源の流入により個体のサイズや個体群サイズ,さらには種間相互作用が変化することが確認されている。また,資源の流入量や流入する季節,受ける側の面積などが,資源の影響を左右する要因として調べられている。一方で,資源流入は,個体数だけでなく,空間分布にも影響する可能性がある。また,資源流入の生じやすさには空間的な変異があり,資源が流入しやすい場所に生物個体の分布が偏る可能性がある。このため,本研究では資源流入の起こりやすさに着目し,流入資源の有無や現地性資源の有無が生物の個体数と分布に及ぼす影響を検討した。
 具体的には,北海道道東の岩礁潮間帯から潮上帯に生息する巻貝,クロタマキビ(Littorina sitkana)を対象に野外調査をおこなった。クロタマキビは,暑さや乾燥,捕食者対策として集合する習性がある。道東の海岸には春から夏にかけて,クロタマキビの餌となる昆布が流れ着く。道東の2つの海岸に5m間隔でトランセクトを7つ設定し,各トランセクト内に15個のコドラート(50㎠)を置いて写真を撮影した。また,場所の特徴として石の数や傾斜を評価した。画像を用いて,流入資源,現地性資源の有無,生物の集合サイズを調べた。
 その結果,昆布は岩礁の壁面よりも,石がゴロゴロしている底面に多く引っかかっていることが分かった。さらに,昆布が流れ着いている場所に巻貝の分布が集中し,集合サイズが大きくなることが明らかとなった。これらの結果は,資源流入の影響があまり報告されていない海岸生態系において,資源流入の起こりやすさに地形による差が生じていること,資源流入により生物の数のみならず,空間分布が変化することを示唆している。


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