| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-052  (Poster presentation)

営農型太陽光発電の支柱はクモの網の足場として機能する
The braces in agrivoltaics serve as scaffolding for the orb-weaving spiders

*向峯遼(農研機構・農工研), 吉鴻一(農研機構・農工研), 土屋遼太(農研機構・農工研), 大橋雄太(農研機構・農工研), 石井雅久(農研機構・農工研), 竹内大将(千葉エコ(株)), 藤谷拓也(千葉エコ(株)), 馬上丈司(千葉エコ(株))
*Wataru MUKAIMINE(NIRE), Koichi YOSHI(NIRE), Ryota TSUCHIYA(NIRE), Yuta OHASHI(NIRE), Masahisa ISHII(NIRE), Takamasa TAKEUCHI(Chiba Ecological Energy Inc.), Takuya FUJITANI(Chiba Ecological Energy Inc.), Takeeshi MAGAMI(Chiba Ecological Energy Inc.)

農地の上部に太陽光パネルを設置し、営農と発電を同時に行う営農型太陽光発電は、増加するエネルギー需要への対応策および持続可能な農業を実現する方法として世界的に注目を集めている。既存の土地を利用できるため、営農型太陽光発電施設の面積は日本でも増大している。営農型太陽光発電圃場では、農地の上部に太陽光パネルを設置することで農地の微気象に影響を持つことが知られているが、農地やその周辺に生息する生物に対しての影響を調べた論文はほとんど知られていない。本研究ではその一環として、太陽光パネルを設置するための架台と土着天敵生物として知られる造網性クモ類との関係性を調査した。千葉県千葉市にある営農型太陽光発電圃場において2023年6月から9月にかけて毎月一度調査を行い、圃場にあるクモ類の網の水平・垂直位置とその網主の種、網に捕らえられている昆虫類を記録した。4回の調査の結果、圃場内の架台では造網性クモ類はオニグモ、チュウガタシロカネグモ、アシナガグモ類、ジョロウグモが確認された。これらのクモ類は調査月によって大きく個体数が異なることも明らかになった。垂直分布では、架台の補強のためのブレース部に頻繁に網を張っていることがわかった。水平分布では、雑木林に近い場所で造網が多くみられた。餌生物としては半翅目が最も多くみられ、餌生物の総捕獲数は雑木林に接している部分で多く捕獲されていた。クモの造網位置は、設置のしやすさと餌の捕獲可能性など複数の要因によって左右されることを考慮すると、本研究の結果からはブレース部は造網しやすく、雑木林の付近では餌捕獲可能性が高いと考えられた。


日本生態学会