| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-057  (Poster presentation)

Fecal management in an ant

*Hiroytuki SHIMOJI(University of the Ryukyus), Yusuke ISHIZUKA(Kwansei Gakuin University), Akari NISHINA(Kwansei Gakuin University), Junji AKINO(Kyoto Institute of Technology)

アリなどの真社会性昆虫は高密度で閉鎖的な空間に生息しており、巣内で病気の感染を防ぐために様々な仕組みが進化している。その中でも、多くの種でアリは巣内の限られた場所で糞を堆積させてトイレを形成することが知られている。これは、病原性微生物の感染源である糞を集中させることで、巣内の個体が糞から病気感染を防ぐことがその機能の一つであると考えられている。本研究では、日本産トゲオオハリアリを用いて、トイレの役割りとトイレ形成メカニズムについて調べた。本種では、複数の巣室を設けた巣で飼育した場合、ある一部の巣室の角や壁沿いに明かなトイレを形成することが分かっている。まず初めに、複数の巣部屋を持つ実験巣を用意し、巣外でワーカーによって摂取された病原性細菌が巣内へ運ばれるかPCRによって調べた。その結果、巣内で細菌由来のDNAは検出されたが、トイレ部屋から高い割合で検出された。これはトイレが病原性微生物の巣内での広がりを抑える可能性を示唆する。次に、単一の巣部屋を持つ実験巣を使って、ワーカーの糞を濾紙の下に設置し、そこへトイレが形成されるか調べた。その結果、壁側に設置した場合は糞敷いた濾紙の上にトイレが形成された一方で、巣の中央に設置した場合はその場所でトイレ形成は見られなかった。最後に、糞の匂いと空間構造を考慮したシミュレーションを行った結果、巣内の壁の効果がある場合に通常のコロニーと同様の位置にトイレが形成されることが分かった。これらの結果は、トイレの形成には空間構造が重要である事を示唆する。最後に、本種の共生細菌の伝播を含めたトイレの多機能性について議論する。


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