| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-059 (Poster presentation)
動物の中には複数の代替的な防御戦術をもつ種がいる.これらは,異なる捕食者に応じた防御である可能性があるが,同じ捕食者に対してであっても複数の戦術を示す可能性も考えられる.不動行動は,被食者が捕食者に攻撃された後に,独特な姿勢で一定時間硬直する行動である.イソヘラムシは捕食者である魚類からの攻撃に対して,えびぞり姿勢で硬直する不動行動を示す(Igarashi & Wada accepted, ESJ70で発表).さらに演者は,オホーツクへラムシで,“不動”(刺激感知直後にえびぞり姿勢で停止),“泳いで不動”(感知直後に短時間遊泳して停止),“丸まり不動”(感知直後に丸まった姿勢で停止)の3つの不動戦術を発見した.本研究では,これらの不動戦術の決定要因解明を求めて行動観察を行った.ヘラムシを採集し,1日間の静置期間を設けた後,1回目の行動観察を朝と晩の2回実施した.行動観察終了後に個体を継続して飼育し,5日後に2回目の行動観察を同様に実施し,個体につき合計で4回の行動観察を行った.個体の体サイズなどに応じた戦術利用について検討するため,すべての実験終了後に個体の体サイズ,性を記録した.その結果,“不動”,“泳いで不動”の明瞭な使い分けは認められなかった.しかし“丸まり不動”はこれらの2戦術と同一の接触刺激ではほとんど誘発されなかった.また,小型個体ほど複数の戦術を利用する個体の頻度が高かった.発表ではこれらの結果について議論する.