| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-060 (Poster presentation)
生息地が地理的に異なる個体群間で見られる形質の変異は、多くの場合は環境条件によって変化する選択圧がその原因となっている。このような形質の地理的変異を調べることは、形質の進化を明らかにする上で適した方法の一つである。その一方で、外部形態や生活史形質における地理的変異を調べた研究例は数多く存在するが、行動形質や繁殖形質の地理的変異を調査した研究例は比較的少ない。そこで本研究では、野外個体群の採集が容易なコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)を研究対象として、日本各地で採集した野外個体群間で、行動形質および繁殖形質を比較する調査を行った。測定した行動形質は死にまね行動と自発的活動性であり、また雄の交尾活性や雌の交尾回数を繁殖形質としてそれぞれ測定した。その結果、行動形質と繫殖形質の両方において野外個体群間で有意差が見られ、特に死んだふり行動や雄の繁殖形質ではその変異が緯度に依存するような緯度クラインが見られた。これらの結果から、本種の行動形質や繁殖形質における地理的変異が明らかになり、形質によっては緯度クラインを示すことも明らかになった。本講演ではこれらの結果が生じた原因について考察する。