| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-062 (Poster presentation)
これまでの研究により,ヒトの70~90%が右利きを示すことがわかっている。一方で,ヒト以外の様々な霊長類でも利き手の研究がおこなわれてきた。しかし,マカク属の1種であるアッサムモンキーでは利き手の研究がほとんどされていない。アッサムモンキーは東南アジアから南アジアからにかけて分布し,ヒガシアッサムモンキー(M. a. assamensis)とニシアッサムモンキー(M. a. pelops)の2亜種に分類される。そこで本研究ではヒガシアッサムモンキーの利き手について予備的な研究をおこなった。
調査は,タイ国北部のピサヌローク地域に位置する寺院で12日間にわたり,野生のアッサムモンキーの1群を対象に調べた。この寺院では飼育している犬のために餌として炊いた米を給餌しており,この残飯を食べにサルが山から降りてくることがある。そこでサルがこれを採食する際にどちらの手を使って食べていたかをビデオに記録して分析し,Hand Preference Index [HI] を算出した。Hopkins 2013を参考に,HIスコア0.20以上は右利き, −0.20以下は左利きとした。調査対象とした大人のサルの内,8頭が左利き,3頭が右利きであった。また3頭は右手と左手共によく使う傾向があったが,他の霊長類の研究で考えられているように,より複雑な作業を行う際には利き手が生じる可能性がある。本研究では,群れの一部を対象にデータを集めて分析をおこなっているため,今後更なる調査をおこなうことで,本種の利き手の有無や傾向を明らかにしていきたい。