| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-067  (Poster presentation)

チリメンカワニナの内在リズムにおける概日・概潮汐周期の季節変動【O】
Seasonal variation in the circadian and circatidal rhythms in a freshwater snail【O】

*横溝匠, 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Takumi YOKOMIZO, Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

月や地球の回転運動がもたらす力は、地球上の環境を周期的に変化させる。生物は内在的な時計機構をもつことで、自己のリズムを環境サイクルと同調させている。河川の河口付近などの潮汐環境では、24時間周期の日周サイクルと約12.4時間周期の潮汐サイクルによる複合的な環境サイクルが存在する。さらに、日長は季節変化し、潮汐サイクルによる水位変動の大きさも年内でさまざまに変化する。生物の概日リズムには季節性があることが知られているが、潮汐サイクルの変動が生物リズムに与える影響を検証した例は少ない。本研究では、チリメンカワニナの感潮域集団と非感潮域集団における内在リズムの年内変動パターンを解析した。木曽川の感潮域と非感潮域において、2月、5月、8月、11月に個体を採集し、すぐに実験室の恒暗条件(DD条件)で行動観察を行なった。活動リズムを解析すると、どちらの集団でも、ほとんどの季節で概日リズムが検出された。しかし、2月の非感潮域集団では明瞭なリズムがみられなかった。また、5月の感潮域集団では活動リズムに概潮汐成分が検出されたものの、ほかの季節では検出されなかった。これらの結果から、チリメンカワニナの活動リズムにみられる概日リズムや概潮汐リズムの強さが年内で変化することが示された。また、行動観察と並行して、DD条件下で4時間おきに各集団の個体を固定し、3種類の概日時計遺伝子(clockperiodcycle)の発現量を定量PCRによって調べた。その結果、すべての遺伝子において発現量が季節によって異なり、とくに2月の集団では低い発現量を示す傾向にあった。2月の集団が不明瞭な活動リズムを示すことからも、冬季には内在リズムが弱くなることが示唆された。これらの結果に加えて、時計遺伝子の発現リズムを調べることで、チリメンカワニナの内在リズムの季節性について議論する。


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