| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-074  (Poster presentation)

睡眠の適応的意義を探る:ブラウントラウトにおける睡眠パタンと成長・生存
Elucidating adaptive significance of sleep: relationship between individual sleep pattern and fitness components in brown trout

*古澤千春, 小泉逸郎(北海道大学)
*Chiharu FURUSAWA, Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ.)

私たちが毎日眠るように、睡眠は動物の生命維持にとって不可欠な行動である。睡眠はエネルギー節約や、身体や神経系の回復、免疫系の維持などの機能が多くの神経・生理学的な研究により解明されている。一方で、生態学的には負の機能もある。睡眠中の意識の低下は採餌や警戒などの行動を妨げ、機会損失や捕食者に対して脆弱な状態を生じさせる。これらの睡眠のコストとベネフィットは適応度に大きく影響しそうである。しかしながら、睡眠は生態学において注目されてこなかったため、睡眠と適応度の関係は驚くほど理解が進んでいない。
睡眠パタンの多様な変異がみられるサケ科魚類を用いることで、多様な睡眠パタンがどのように形成され、適応度とどのように関連するか推測できるかもしれない。そこで本研究では、サケ科ブラウントラウトの野外個体群を対象に、潜水観察とPITタグディテクターを組み合わせて睡眠パタンの個体間変異を調べた。また、睡眠パタンと適応度成分である成長と生存との関連を調査した。その結果、睡眠パタンは量的および質的(タイミング)に個体間で大きく異なることが明らかになった。また、睡眠の量的指標である睡眠割合と質的指標である夜間睡眠指数(SNI)は成長と関連を示さなかったが、睡眠割合とサイズの交互作用は生存と有意な関連を示した。このことは、サイズによって睡眠が適応度に与える影響が異なる可能性を示唆している。


日本生態学会