| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-076  (Poster presentation)

スニーキングのようでスニーキングではない横取り繁殖を行うアカハライモリ
Japanese newts represent behavior that looks like sneak mating during the breeding season but is not sneak mating.

*伊藤真(名古屋大学大学院), 西川完途(京都大学), 藤井慶輔(名古屋大学大学院)
*Makoto M. ITOH,(Nagoya Univ.), Kanto NISHIKAWA(Kyoto Univ.), Keisuke FUJII(Nagoya Univ.)

生物の繁殖において、体サイズの小さな個体の行う代替戦略として横取り繁殖(スニーカー戦略)が知られている。メスをめぐるオス間闘争やメスによる配偶者選択に勝てない小型オスや若いオスがそもそも競争への参加をやめ、すでに成立した他個体ペアの行う繁殖に割り込むなどすることで自身の繁殖を成功させようという戦略である。横取り繁殖を行う個体は他個体による繁殖を待ち伏せるなど繁殖行動自体を変化させていると考えられている。アカハライモリではオスがメスに求愛ダンスを披露し、受け入れられた場合にはオスがメスを先導し連なって移動する。その道中でオスは地面に精包を設置し、メスがさらにオスに追随し、メスの総排泄孔が精包の真上に来たときにオスが動きを止めることでメスも止まり、そこで精包が吸収されるという、複雑なプロセスを経ることで精子の受け渡しを行っている。このような精包の受け渡しの際に、異なるオスが稀にその列に割り込み精包を設置する行動が観察されることから、アカハライモリも横取り行動を取ると考えられている。本研究ではその横取り行動が代替戦略なのかを確かめるために、横取り行動を行った個体の移動軌跡を通常の繁殖行動を行った個体と比較した。まずオス2個体、メス1個体を水槽に入れ、イモリにおける横取り行動の撮影を行い撮影された映像をトラッキングソフトウェアによって解析し座標データを取得した。得られた座標データをもとに、横取り行動を行った個体と横取り行動をしなかった個体との移動パターンの比較を行った。その結果、横取り個体と普通個体の移動パターンに明らかな二型は確認されなかった。したがって、アカハライモリにおいては個体ごとに代替戦略として横取り繁殖が存在するのではなく、繁殖行動の選択肢の一つとして横取りが存在することが明らかとなり、アカハライモリにとって他オスの存在は繁殖において大きなリスクになることが示唆された。


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