| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-077  (Poster presentation)

人馴れした都会の鳥における捕食リスクへの応答
Habituation to humans in urban birds: responses to predation risk

*濱尾章二(国立科博)
*Shoji HAMAO(Natl Mus Nat Sci)

都市は野生生物にとって本来の生息場所とは大きく異なった環境であり、生態、生活史、生理、行動に都市特有の変化の起こる場合がある。本研究では、人が多い都市において鳥類のリスク回避行動が緩和されるという現象に注目する。都市では田舎に比べ、人が近距離に近づくまで鳥が逃げない(逃避開始距離が短い)ことが知られている。このリスク回避行動の変化は人に対してだけ生じているのであろうか。捕食者全般に対する警戒性は変化していないであろうか。また、新奇物に対する探索性は都市で変化していないであろうか。これらの疑問に答えを得るため、都市(東京都23区内)と田舎(茨城県南部農村地帯)でスズメを対象に野外実験を行った。実験はその場所の繁殖個体群の成鳥(前年以前生まれ)のみを対象とするよう3月末から5月上旬に行った。実験では、ヘビ(アオダイショウ)の剥製を置き、誘引するための音声(ウグイスの警戒声)を再生し、スズメの反応を記録した。誘引音声だけの効果を知るため、(別個体のスズメに対して)ヘビを提示せず誘引音声の再生だけを行って、同様に反応を記録した。解析の結果、都市では田舎より接近の度合いが高かった(スピーカーの近く[3m以内]にいる時間が長かった)。ヘビ提示の有無は接近の度合いに効いていなかった。都市-田舎とヘビ提示の交互作用も検出されなかった。この結果は、都市のスズメは田舎の個体よりも誘引音声に強く引きつけられたことを示し、都市で探索性が強くなっていると考えられた。また、捕食者に対するリスク回避が検出されなかったのは、気温が低くヘビが脅威と認識されなかった可能性や、誘引音声の効果が強くヘビへの反応が現れなかった可能性が考えられる。捕食者に対する警戒性を都市-田舎間で比較するため、今後異なる実験デザインで研究を進める。


日本生態学会