| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-078 (Poster presentation)
両生類のロードキル緩和は成体を対象におこなわれてきた。しかし、ヨーロッパにおけるヒキガエルパトロールのように、依然として個体群縮小が止まらないケースもある。繁殖する成体を守っても個体群が回復しないことから、成体だけでなく幼体にも着目することが重要だと考えられる。本研究では、生活史段階の違いがカエル類2種の路上への出現に与える影響を明らかにすることを目的とした。
山形県庄内地方にて、2022年7月から10月と2023年5月から10月にかけてルートセンサスをおこなった。トノサマガエルとタゴガエルを対象とし、路上に出現する個体を探索した。観察された個体は頭胴長を計測し、繁殖最小個体の記録を基準に幼体と成体を定義した。路上に出現する幼体および成体の個体数について、半径100 mから1,500 mのバッファ内の周辺景観と気象要因との関係を一般化線形モデル(GLM)で解析し、成体と幼体を比較した。
ルートセンサスの結果、計212 kmの路上で、トノサマガエルは成体と幼体をそれぞれ87、106匹、タゴガエルは成体と幼体をそれぞれ109、106匹発見した。GLMの結果、トノサマガエルで最適空間スケールの違いが見られ、幼体で300 m、成体で1,100 mだった。このことから、トノサマガエル幼体は近隣の水田に依存し、成長過程で広いスケールが重要になると考えられる。両種ともに景観の複雑性の影響は生活史段階間で異なっており、幼体は複雑な景観を持つ道路に出現しづらかった。本研究の対象種のような、単一の生息地に忠実な種は生息地の分断化に比較的強いが、過度な分断は幼体の移動を制約し、誤ったロードキルリスク推定につながる危険性がある。今後は成体だけでなく、幼体も考慮して緩和策を検討する必要があるかもしれない。