| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-082  (Poster presentation)

ミツバチ腸内細菌は宿主の寿命に対してコストを課す
Harboring gut microbiota is potentially costly for survivorship of honeybee

*佐藤正都, 宮崎亮(産業技術総合研究所)
*Masato SATO, Ryo MIYAZAKI(AIST)

近年、腸内細菌の構成が宿主の健康に与える影響に多くの関心が集まっており、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)は、そのシンプルで安定的な腸内細菌叢の優れた特徴から宿主―腸内細菌相互作用のモデル系として注目されている。本研究では、5種の主要な腸内細菌、Snodgrassella alvi, Bifidobacterium asteroids、Bombilactobacillus Firm-4、Lactobacillus Frim-5、Gilliamella apicolaおよびそれらの種間相互作用がミツバチの生存率にどのような影響を与えるかを、全32通りの異なる細菌の組み合わせを使用して調査した。生存試験の結果、腸内細菌の投与によって生存率が改善されることはなく、むしろ腸内細菌の存在は生存率を低下させる傾向にあることが分かった。この結果は、宿主であるミツバチが、腸内細菌を保持することに何らかのコストを支払っているということを示唆している。また、細菌間の高次相互作用項を含む一般化線形モデルによる回帰分析から、細菌間の相互作用が生存率に有意な影響を及ぼし、宿主の生存率への効果は2次および4次の相互作用は正で、3次および5次の相互作用は負であるという定性的な傾向が示された。次に、一般化Lotka-Volterra競争モデルを構築して、どのような細菌相互作用がこの定性的な傾向を生み出すかを分析した。その結果、すべての細菌種が他の種の増殖に負の影響を及ぼす場合、つまり、細菌間の相互作用が「競争」的である場合に、この定性的な傾向が再現され、3次の細菌間相互作用も量的に寄与することがわかった。このような高次の相互作用は群集を安定化させることが提唱されており、理論モデルの分析によって示唆された腸内細菌間の高次相互作用は、ミツバチの腸内細菌叢を安定化する役割を果たしている可能性がある。


日本生態学会