| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-085 (Poster presentation)
冬期の低温は生物の分布拡大の重要な制限要因となっている。しかし、近年の地球温暖化によって冬期の気温が下がりにくくなっており、多くの分類群で分布域の変化・拡大が起きている。国内においてコガタノゲンゴロウは分布が拡大していることが知られており、その要因の一つとして地球温暖化が示唆されている。また、本種はニッチが重複する近縁種(ナミゲンゴロウ、クロゲンゴロウ)と種間競争が起きる可能性が懸念されている。石川県では2012年に初めて本種が確認され、以降は個体数が増加している傾向にあるが、冬期・早春には確認されない、あるいは死骸が発見されることから、越冬ができず死滅している可能性が高いと推察されている。本研究では、石川県におけるコガタノゲンゴロウの生息状況、特に越冬の可否について明らかにするため、能登地域にて分布、季節消長、標識再捕獲の調査および野外越冬実験を行った。
分布調査は、能登地域(羽咋市以北)の水域を対象とし、2022年4月~2023年11月にかけて、たも網による掬い取り、ベイトトラップ、目視観察によって本種の有無を確認した。また、文献をもとに過去(2012年~2021年)の記録を整理した。季節消長は、能登地域にある2箇所のため池を対象とし、2023年2月~2023年12月にかけてたも網による掬い取りによって本種の個体数を記録した。野外越冬実験では能登地域にある1箇所のため池内に本種を入れた水槽を設置し、2023年11月~12月末までの生存率を記録した。
石川県では2012年~2023年までほぼ連続して本種が確認された。季節消長では3月~8月にはほとんど確認されず、9月~11月に個体数が増加した。2022年の秋期に本種76個体を標識したところ、翌年2023年11月に1個体が再捕獲された。野外実験では、12月末にすべての個体が仮死状態となっていた。これらの結果から、石川県において本種は一部の個体が越冬できているものの、その多くは死滅していると考えられた。