| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-093 (Poster presentation)
植物には新葉が赤や紫などの赤系の色を呈する種類が少なくない。この新葉の赤い色は新葉が有害な防御物質を持っていることを示す植食者に対する警告色であることが近年わかってきた。新葉の赤色は多様な分類群で見られるので、警告色の機能は多種の植物と多種の植食者の間で共進化したと推測される。しかし、ある植物の新葉の赤色が複数の植食者に対して警告色として機能することが示された例はない。そこで、オンブバッタに対して警告色として機能することがわかっているサツマイモの品種安納芋の新葉の紫色が他の植食者に対しても効果があるか明らかにするため、サツマイモの害虫であるヨツモンカメノコハムシの葉の色の好みを調査した。安納芋の新葉(紫)と成葉(緑)、サツマイモの品種ベニアズマの新葉(黄緑)と成葉(緑)を直径15 mmの円形に切り抜き、各一枚計四枚をシャーレに入れ、白色光の下で成虫一匹に五時間摂食させた。その後、残った葉の面積を測定し、摂食された面積を調べた。その結果、安納芋新葉が摂食された面積が有意に少なかった。同じ実験を青色光下と暗黒下で行ったところ摂食面積に葉の間で有意な違いがなかったことから、本種は色覚によって葉を識別しており、紫色の葉を好まないと言うことができる。また、それぞれの葉を与えた時の本種幼虫の成長を比較したところ、安納芋とベニアズマの両品種共に新葉を与えた時に幼虫の成長が有意に悪かった。従って、サツマイモの新葉は本種にとって質の悪い餌であり、安納芋新葉の紫色は本種にとっても警告色となっていることが明らかになった。